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「メゾン・ド・魔王」レビュー、経営も育成も戦略もアクションも全部楽しい

date: 2013/02/20 12:00
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体験版のプレビュー製品版の配信開始のニュースでもお伝えしたPC版「メゾン・ド・魔王」をクリアしたので、本作のレビューを書いていきます。

正直、「Xbox Liveインディーズゲーム出身」と聞くと身構えてしまう人は少なくないかもしれません。
実際自分も、あの玉石混交のゲーム畑の中では80ゲイツ(80MSP)の「石」をたくさん見てきた身ですし、偶然見つけた「玉」(つまり宝玉)であってもそれはまだ磨く前のもの、どこかしら一箇所のアイデアが優れている(一発ネタ)だけという印象の作品ばかりでした。
しかし「メゾン・ド・魔王」は本当に、何から何まで、よく出来ていた。
「XBLIGだから」とか「インディーズゲームだから」といった、余計な予防線や偏見を持って評価する必要は一切ありません。

本レビューに関しては、販売元であるPLAYISMが募集していた、レビュアー用のゲームキーコードの提供を受けています。
PLAYISMさん、いつもお世話になっております!
また同じく、こうしてゲームプレイとレビューの機会をくださった、開発元であるプチデポットさんにも御礼申し上げます。


体験版からのデータ引き継ぎについて

本編の内容に言及する前に、体験版から製品版に引き継がれるデータについて補足しておきます。
実は両版とも、

マイドキュメント\SavedGames\Maison

にセーブデータが保存されているので、ファイルのコピーのような特殊な操作は必要ありません
製品版を起動して、「つづきから」を選択することで体験版のデータを読み込むことができます。
ただし当然、製品版で保存したデータを体験版側で読み込むと不具合が出るでしょうが……。

どうやらMicrosoft XNA関係のゲームのセーブデータはここに保存されるようです。
自分は本作の他にも、過去にプレイしたことのある「DLC Quest」と「Car Washer: Summer of the Ninja」のセーブデータが入っていました(両者は共に、XBLIGからPCへの移植版がリリースされたゲーム)。

モンスター側視点というギミックと、ゲーム性の高度な融合

モンスターを統べる魔王が、アパートの大家だったら

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プレイヤー扮する魔王は、モンスターを住まわせるアパートを作りました。
ゆくゆくはそのモンスターと共に、世界征服を目指すのです!

勇者視点で語られる王道RPGとは反対に、魔王の側に立って物語が進められるゲームは、今となってはそれほど珍しいものではありません。
「勇者のくせになまいきだ。」などは特に有名でしょう。
そういったゲームの中でも本作「メゾン・ド・魔王」が光っているのは、モンスターが仕事を持ち(あるいは持たず)、アパートに住み、家賃を支払い、恋人を作り、子供を産み……そういう、まるで人間のような生活を送っている点にあります。
彼らには彼らなりの道理があり、社会があることを理解することで、プレイヤーはモンスターたちに感情移入していくのです。

シミュレーションパートの楽しさ

「メゾン・ド・魔王」のゲーム性は、大まかに2つのパートに分けられます。
1つ目はアパート経営やモンスター育成に関するシミュレーションパート。

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住人となるモンスターが満足するように、内装や家具を揃えていきます。
種族や職業によって必要なものがあったり、娯楽を要求されたりと、大家さんの仕事は大変です。
ご機嫌を伺いながら家賃を上げていくわけですが、その額が住人の収入を超えると滞納が始まり、住人の表情は曇りがちになり、ついには「夜逃げ」されてしまうという悲惨な現実を突きつけられるので注意が必要です(クリアまでに4人に逃げられて凹みました)。

この経営シム要素は、モンスターの育成要素と密接に関係しています。
モンスターは時に恋人と同棲をはじめ、子供を産みます。産まれた子は親よりもステータスが高く、世代交代を重ねることで少しずつ強いモンスターへと育てることが可能です。
「○号室と×号室のモンスターが付き合い始めた!」とか「産まれたばかりの子供を残して、両親が勇者に殺されてしまった……」とか、日々刻々とドラマが生まれていくのです。

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プレイしているうちに、モンスターに対して愛着がわいてきます。
お気に入りのキャラクターに注目するのも楽しいプレイスタイルです。

彼女は101号室に入居しているアンデッド族ゾンビーのブベ子。
戦闘では矢面に立ち、敵勇者から味方モンスターへの攻撃を防ぐ、頼れる壁役。
質素な部屋でも満足してくれるし、普段の仕事でもしっかり働いている本当に良い子!

ただ……その……なんというか、絶望的にモテない……。
パートナーもいないのに「子宝祈願大福が欲しい……!」とか言ってて、我が子のように可愛がってきた大家さんとしては涙が止まりません。

そこで強制モテアイテム「愛☆バルーン」を購入。
無事に彼氏ができました。よかったな、幸せに暮らせよ!

その後、王女と魔導師との戦いであっけなく死亡しました……。

タワーディフェンスパートの完成度の高さ

2つ目は勇者から魔王を守るタワーディフェンスパート。
ジャンル名だけを聞くと、これもシミュレーションの一部に思えるかもしれませんが、本作においてはアクション的な側面がより強く出ています。

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最上階にある魔王の財産を目指して、勇者ご一行様はアパートをS字に上っていきます。
迎え撃つ魔王は、住人モンスターの部屋のドアをノックし、代わりに戦ってもらうのです。

各ユニットの攻撃は、近接・遠隔の2つの方法と物理・魔法の2つの属性の組み合わせ、計4パターンの中から1つが設定されています。
防御は、体力とそれぞれの攻撃属性に対応する物理防御力と魔法防御力が設定されています。
この辺はキャラクターもののタワーディフェンス(TD)としてはオーソドックスで、逆にいえばプレイヤーにも馴染み深い、わかりやすいパラメーターでしょう。

本作のTDパートが面白いのは、攻撃位置への移動と退避位置への逃走に「(時間的・空間的な)間」がある点です。
基本的には壁役として近接を前に、打たれ弱い遠隔はその後ろに配置するわけですが、敵の攻撃に耐え切れないと判断したら体力の減っている前衛の味方モンスターを逃がすことができます。
ただ黙って事の成り行きを見守るのではなく、積極的に指示を出すことで味方の被害を減らす余地があるのです。
階段部分を使って孤立させたり、殴り合い覚悟で挟み撃ちをしたり、攻撃と逃走を小刻みに繰り返して引き撃ちをするなど、戦略とアクションが両立された完成度の高いシステムになっています。

前述のとおり、モンスターたちはそれぞれ勝手に生活しています。
仕事に関しては日勤・夜勤、在宅勤務(か自宅警備)、その他にも買い物だったり遊びだったりでアパートにいないこともあるのです。
あるいは前回の戦闘で死亡していたり、突然夜逃げしてしまったり、常にベストメンバー・ベストコンディションで待ち構えられるとは限りません。
この辺のランダムな要素が毎回ちょっとした変化をもたらし、戦闘が単調になるのを回避してくれています。

合計50個ほどあるクエストには、前後でストーリー的な繋がりを持つものもあって、その脈絡を読むだけでも中々楽しめます。
特に個人的には、クエスト「村の怒り」から本当に怒りが伝わってきて、大爆笑しました。

各要素がしっかり噛み合っている

本作で一番評価すべきは、各要素がしっかり噛み合っている点です。
これまでの説明で、シミュレーションパートにおけるアパート経営とモンスター育成の連携、そしてそれらが直接タワーディフェンスパートにおける戦闘の優位性に繋がっていることが理解できたと思います。
各パートを繰り返しプレイする中で、「子供が育ったらこのフロアは3倍の火力になるぞ」とか「こいつが昼におらんかったときのために、在宅の漫画家を上の階に住まわせとこう」いった、何かのチームの監督さながらのリスク管理を行い、盤石な体制を作っていくわけです。

「タワーディフェンス」というジャンルを、毎回同じ操作をしたら同じ結果が得られるような「パズル」の一種だと捉えている人にとっては、ランダムな要素は許せないものでしょう。
しかし本作においては、「モンスターがそれぞれ自由に生活するアパート」という物語のギミックによって、一々説明せずともそのゲーム性が理解され、許容されているのです。
論理的に破綻することなく、すべての要素が調和している本作のゲームデザインには、ただただ驚くばかりです。

難易度設定とやりこみ要素には不満が残る

最後のクエストだけ異様に難しい

合計50個ほどあるクエストは、育成システムをあまり理解していなくても、何とかクリアできるはずです。
ただし最後のクエストだけはすごく難しかった!
それまで「ノーマルモード」でプレイしていたと思ったら、急に「エクストリームモード」になったくらいの差がありました。

そもそも本作には「詰み」の概念はありません。
必要ならばクエストの進行を中止して、育成に集中することが可能です。
とはいえ種族の好感度とそれに伴う新しいモンスターのアンロックには膨大な時間がかかるため、軌道修正は容易ではありません。
スムーズに進行するには計画的なゲームプレイが求められます。
ラスボスとして十分な歯ごたえがあるのは嬉しいことですが、歯がすべて折れてしまうほどのあの硬さには、内心で引っかかるものがありました。

やりこみ要素や周回プレイ要素の不足

死亡や夜逃げは戦力ダウンというだけで、それ以上のペナルティーはなく淡々と進行します(後味は悪いけれども)。
当然実績システムはなく、あるのは「プレイ記録」のページだけ。
具体的にゲーム側で提供されるやりこみ要素は皆無です。
例えば「オートセーブのみでやり直しが効かない」とか「敵の体力が増える」とか「モンスターが死んだらゲームオーバーになる」というようなハードコアモードが用意されていればもっと長く楽しめそうなので、この辺が少し残念に感じました。

また苦労の末にゲームを攻略して増えた要素が、「勝手に戦う」オプションだけというのも寂しいところです。
どうせなら2週目はデータを引き継ぎ出来て、1週目ではアンロックできなかった種族(反目しあっている関係で手付かずのものがある)をコンプリートできるような仕組みだったら嬉しかったのですが……。

まとめ、数時間のゲームに数年分のドラマが詰め込まれている

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  • 経営・育成シミュレーションとタワーディフェンスの高い次元での融合
    (経営も育成も戦略もアクションも、全部楽しめる)
  • コミカルなキャラクターデザイン
  • やりがいのあるクエスト数
  • ポップな音楽
    (サントラ発売を熱望。Bandcampで売れば海外勢も食いつくのでは?)
  • 全編にわたる、センスの良い文章
    (これは実際にプレイして、不意打ちで見て、笑って欲しい)
  • レスポンスのいい操作感
    (マウスに最適化されている)
  • ドラキュララ♀が可愛い!
  • ドラキュララ♀が可愛い!!
    (ファンがTwitterなんかで使えるようなちょうど良いサイズのアイコンを、プチデポットさんが公式に配布してくれないかなー? チラチラッ)

PC版「メゾン・ド・魔王」はPLAYISMにて360円で好評発売中です。
いやー、本当に面白かった。
子供が立派に育ったと思ったら「ハガキ職人」になっていたり、「無職」のハロワ通いから就職口見つけてきたり、数時間のゲームで数年分のドラマを見せてもらいました。

普段「よう、こんな面白いゲームあるんだぜ? 知らないだろ、やってみろよ?」と上から目線で言ってくる海外のインディーズゲーム愛好家達に、「日本製の『メゾン・ド・魔王』ってゲーム、超面白いんだぜ!」と自慢してやりたいと思います。

最後に一言。クリア後のエンドロールは必見です(スタッフロールではない)。
これを見て、その長さを、その重みを、是非とも全プレイヤーに感じて欲しい!
妥協してしまった過去の自分を責めて欲しい!

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