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Twitter連載小説「ニンジャスレイヤー」、今このアトモスフィアがヤバイ

date: 2012/02/03 20:04 | update: 2012/10/01 16:32
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Twitterで連載されているサイバーパンクニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」をご存知でしょうか?
自分もつい最近gusuさんに教えてもらったばかりなのですが、読み始めた途端に夢中になりました。今回はその魅力について少し語ろうと思います。


ニンジャスレイヤーとは

ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上1

10月01日追記: ついに書籍化されたよ! ヤッター!

ニンジャスレイヤーはTwitterの@NJSLYRアカウントで連載されているウェブ小説です。
原作は、Bradley BondとPhilip “Ninja” Morzezの二名による自家小説ですが、日本の翻訳チームが権利を譲り受けて日本語版をTwitterで公開している……とのことです(詳細は後述)。

正直最初は、Twitterという短文(1ツイートにつきたった140字!)しか保存できない媒体で長編を追うのは厳しいと考えていて、それほど真剣には読んでいませんでした。
もちろん今でもその形態が読みやすいとは思っていません。しかし、そのマイナス面なんてどうでもいいと思えるほどに内容が面白かったのです!

世界全土を電子ネットワークが覆いつくし、サイバネティック技術が普遍化した未来。宇宙殖民など稚気じみた夢。人々は灰色のメガロシティに棲み、夜な夜なサイバースペースへ逃避する。政府よりも力を持つメガコーポ群が、国家を背後から操作する。ここはネオサイタマ。鎖国体制を敷く日本の中心地だ。

またその影では、「ニンジャ」と呼ばれる超人的な能力を持つ者が暗躍しています。
主人公フジキドは妻子をニンジャに殺され自身も死ぬ寸前でしたが、突如ニンジャソウルが宿り一命を取り留めます。
こうして彼は強大なニンジャの力でニンジャを殺す復讐者、「ニンジャスレイヤー」となったのです。

ここが面白い!

一体この小説の何がそんなに面白いのか?
一番は「間違った日本観や日本語を巧みに混ぜてくる」点でしょう。

外国人が誤った日本観や日本語を自作で表現するというのは、映画やゲームなどで見たことがあると思います。このブログでも過去に紹介したDiRT 2の「極度乾燥(しなさい)」Anomalyの「広告媒体」などもその例です。
真面目なシーンであればあるほど、こうした「ちょっとした誤解」は面白く感じます。むしろネイティブである日本人では、この絶妙な間違い方を狙って生み出すことは難しく、こういうネタが大好物という人も多いでしょう。

例えば、ニンジャスレイヤーの本文を引用すると、

「Wasshoi!」赤黒いニンジャ装束を纏った謎のニンジャが、天井から突如出現し、空気を切り裂くような3連続回転と共に着地した。そして一瞬の隙も無いオジギを決める。「ドーモ、ロブスター=サン。ニンジャスレイヤーです」「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。ロブスターです」

Twitter / @NJSLYR: 「Wasshoi!」赤黒いニンジャ装束を纏った謎のニ …

たとえ敵であっても、決闘前には挨拶と礼をするという日本観。
「カラテカか!」とツッコミたくなりますが、緊迫した状況でお辞儀をし合っているというシュールな絵を想像すると、笑いがこみ上げてきます。あるいは、

「安い、安い、実際安い」「この飛行船は広告目的であり、怪しくは無い。安心です」欺瞞の言葉を周囲に撒き散らしながら、飛行船はサーチライトを投射し、対象を探している。「……」一秒後、ニンジャは高く跳躍し、ネオン看板を蹴りながらビルの屋上へ飛び移った。そのまま駆け出した。

Twitter / @NJSLYR: 「安い、安い、実際安い」「この飛行船は広告目的であり …

実際安いという微妙におかしい日本語。
注釈によると、これはactuallyを訳したものだそうですが、この絶妙な間違い加減がたまりません!

さあ読んでみよう!

ニンジャスレイヤーに興味が出てきましたか?
では実際に、この世界を体験してみましょう。

有志の方がTogetterで各エピソードをまとめてくれています。これが一番見やすいでしょう。
Togetterへのリンクは、ファンによるWikiで時系列順にまとめられています。
(エピソードリストは公式サイトにもありますが、こちらは投稿順なため初心者には理解しにくいと思います)

数が多くてどこからどう読めばいいのか最初は戸惑うと思いますが、それほど固く考える必要はありません。好きなエピソードから読んでいって大丈夫です。
個人的なオススメは「レイジ・アゲンスト・トーフ」というエピソード。世界観を掴みやすくストーリーも明快で、ニンジャスレイヤーの導入としては最適だと思います。

レイジ・アゲンスト・トーフ: #1 / #2 / #3 / #4 / #5 / #6 / #7

Togetterはまとめたツイート数が多いと、下部に「残りを読む」と言うボタンが表示される仕様なので、お見逃しないように。

計算されたギミック

ニンジャスレイヤーのすごいところは、エピソードを時系列順ではなくバラバラに投稿している点です。
最初は混乱するのですが、話自体は各エピソード内で完結していることが多いので、どこから読んでも問題ありません。読み手は時系列順で読むもよし、投稿順で読むもよし、サブタイトルを気に入った順で読むもよし、好きに楽しむことができます。
また何より面白いのは、ある程度エピソードを読んで世界観を掴んだ頃に、自分のTL上でニンジャスレイヤーのリアルタイム連載を追うことで、これは翻訳チームの言うとおり「非常にスリリングでエキサイティング」な体験です。

普通、物語というのは一から順に読んでいって、段階的に理解するのが面白いものでしょう。
しかし独特の雰囲気(アトモスフィア)があるニンジャスレイヤーは、そのうちの一節をパッと見ただけでも十分面白いのです。
これは小説としては画期的であり、その意味でTwitter媒体という選択は正解だったと言えるでしょう。

ネタバラシ、というわけではありませんが、冷静に考えれば「原作者から権利を譲り受けて日本語翻訳版を公開している」というのは不自然であり、これは「設定」であると考えるのが妥当でしょう。
「巧みだな」と思わせられるのは、この設定を読んだ瞬間に「そうそう、外国人の日本観ってちょっとずれてて面白いよね」という、過去に誰もが体験したことがある感覚を素早く引き出される点です。
これによってニンジャスレイヤーという文字だけで提供された世界は、読者自身の経験則から視覚的・聴覚的に補強され、想像しやすくなっています。個人的には、The Designers Republicがデザインした初期Wipeoutシリーズの、デタラメなカタカナを思い浮かべながら読んでいます。

字の形状すらもデザインしたかのようなセンスあるカタカナ語!
ついつい日常会話でも使いたくなってしまう名言や掛け声!
緻密に計算されたギミックのすべてが、この秀逸な世界観を作り上げています。

小説の書籍化はもちろん、マンガやアニメでも見てみたい素晴らしい作品です。

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