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「Dinner Date」レビュー、ファン歓喜の芸術作品枠

date: 2012/01/05 18:00
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クリスマス当日にジャッカスさんから「Dinner Date」というゲームをプレゼントしてもらいました。
事前に噂だけは耳にしていましたが、確かにこれはゲームというよりは芸術作品であり、「The Graveyard」と「Vigil: Blood Bitterness」が圧倒的な高さの双璧を誇っていた「愛されるバカ」というニッチな市場に、「じゃあこれで俺たち3バカね」とばかりに食い込んでいった格の持ち主です。
正直この手の作家性の強いゲームを作るのは次も「Tale of Tales」(The GraveyardやThe Pathのデベロッパー)だと思っていたので、個人的には驚いています。

このブログの読者の方に改めて説明するまでもないでしょうが、玉石混淆のインディーズゲーム界において「怪作」が産み落とされるというのは間々ある話です。
しかしそれにコアなファンが付いたり、あるいは語り草になるほど祭り上げられる「作品」は、残念ながらそう多くはありません。


その意味で、本作は最初から最後まで格の違いを見せてくれます。
なんせタイトルに「ディナーデート」とあるのに、デートはしないのですから。

彼(ジュリアン)は、日本人の彼女(メイコ)とのデートをすっぽかされ(というかちゃんと約束したのかも怪しい)、ワインをあおり、パンやスープを一人でヤケ食いします。
その合間に出てくるのは、同僚マリアンヌと上司ジョンソンへの愚痴、ヘッドハンターMr.ドナルドからの世辞で気を良くして出てきた大言、友人ジェリーへの軽口、それから、持て余した性欲による願望……。
フォローしにくい情けない妄想ばかりですが、それと同時に「男なら誰だって大なり小なりこういうことを考えているよな」という共感もできるはずです。

向かいには誰もいない席に着き、彼の寂しいディナーデートがはじまるのです。
そんな一人舞台にツッコミを入れたり頷いたり、段々とひきこまれていく面白さがあります。

唯一ゲームらしい機能として、キーボードの操作によって彼を動かすことが可能です。
しかし、基本的に彼の一人語りは自動的に進んでいきます。
つまりこの機能は視線の先を変えられるというだけで、押しても押さなくてもストーリーは変わらず、彼の情けない妄想はエンディングまでの約20分間延々と続くのです。

面白いことにゲームデザインとしては「ジュリアン=自分」というよくある図式ではなく、「ジュリアンを見ている自分」を意識させるつくりになっています。
客観的に彼の考え方に触れることで、翻って、「もし自分の潜在意識を、こういう風に誰か他の人に見られたらどう思われるのだろう」と考えさせられるのです。
自分の場合は、独身であり彼と年齢も近く、共感するところが結構ありました。
「自分がこの席に着いたら、一体どんなストーリーになるのか」と想像するのも楽しいかもしれません。

このゲームは多くの人には評価されないでしょう。確かに下品で、退屈です。
しかし一種カルト的な魅力をひめていることは間違いありません。

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